朝日訴訟の会・第16回総会
13日、土曜日。朝、いつものように新事務所へ。
午前中、雑務。
午後、NPO朝日訴訟の会第16回総会に、zoomで参加。新事務所に居ながら、歩いて10分の民主会館とつないでのオンライン参加です。
則武透会長は、森・五輪組織委員会会長の辞任にかかわって何が問題なのか理解できていない状況からして、政権与党の政治家たちの社会保障の認識は如何に、と心配になる。生活保護裁判では名古屋裁判所で初めての判決が出されたが、裁判官がどっぷり新自由主義に浸かってしまっている状況。朝日訴訟の会の取り組みがいま改めて重要になっている。と話されました。
記念講演は立教大学の芝田英昭さん。「自助・共助・公助」による全世代型社会保障改革の欺瞞、と題してリモートで。2019年9月に内閣官房に、全世代型社会保障検討会議が設置され、その年の12月19日に第1次中間報告が公表された。この検討会議9名の議員に、中西宏明・経団連会長と櫻田謙吾・経済同友会代表幹事の財界ツートップが入っている。そして、政権与党の自民党が第1次中間報告が公表される前々日の2019年12月17日に、公明党が12月18日に、それぞれ独自で報告書を出しているが、第1次中間報告書は、それらのコピペそのものだ、と検討会議と報告書、それらの生まれについての批判からはじまりました。
続いて、底流にある「自助・共助・公助」観、について言及。社会保障を「自助・共助・公助」との3重構造でとらえる思想の延長線上にあるのが、全世代の負担増の視点であると強調。「自助・共助・公助」は災害時の救助のプロセス論である。私たちが暮らす資本主義社会では、そもそも「自助」という前提は成り立たない。生産手段を奪われているほとんどの私たちは自らに備わった働くことのできる能力(労働力)だけを切り売りして生きていかなくてはならない。失業、障害、疾病、解雇状態、保育等により労働力が一定低減する状況にあるし、定年退職、重い障害、死亡、回復不可能な疾病等により労働力が喪失したりする恐怖に晒されている。これらの課題は「生活問題」と呼ばれている。生活問題を緩和・解決するのが社会保障と呼ばれる制度政策である。個人では回避できない「社会問題の一部」。社会問題とは、3つの要素・要因がある。1.社会の構造上に背景がある、2.広がりを持っている、3.国民が大きく関心をよせ、国が解決していく制度・政策を持っている。だから、人権視点から社会保障を考えれば、公が国民を助けるという「公助」の概念でとらえるのではなく、当然の権利を保障すると理解すべき、と話します。
最終報告は、コロナ禍の非接触型ケア推進、の問題についても言及。社会保障に生産性を取り入れるのは無理があるという研究報告も増えてきた中で、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえた社会保障の新たな課題」という項目を起こしている。そして介護施設などにもタブレットやWI‐FIなどの導入支援を強化、デジタルテクノロジー・AI化を進めるとし、それはより少ない人数で介護サービスを提供、という方向へ誘導している。コロナ禍に乗じて、デジタルテクノロジー・AI化を担う産業を財界の新たな儲け先として開拓していくことに主な狙いがある、と。
ケア労働、医療・介護・福祉の業務は、労働者と利用者とのコミュニケーションを通して、互いに発達を促す労働。専門職の専門性が特に大切。専門性とは、その分野の専門知識、経験、ライセンス、それに予見性と裁量権を備えていることが重要。それを奪っていくデジタルテクノロジー・AI化ではないかと危惧する。
財源論にも話は続きます。検討会議の報告は、実質的には高齢者の負担を増やす方向性を明確にしている。菅総理の2021年1月18日の施政方針演説でも「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心という構造を見直し」すると宣言している。ライフステージだけから見ると現役世代は負担と給付に納得いかないだろうが、一人の人生をライフコースの観点で見ていくことが必要。今の若い人たちもいずれ高齢者になることから、負担と給付の帳尻は会うといえる。などと話します。受診抑制、介護サービス抑制などにつながる「社会保障給付時の一部負担」は速やかに廃止すべき、と強調されました。
閉会のあいさつを初めてオンラインでさせてもらいます。聞こえますか、とまず確認。この講演とても参考になったと感想を述べ、この講演をDVDにしてもらうこと、学習をさらに広めること、人間の尊厳を守るとりくみであった朝日訴訟のとりくみを今こそ若い人たちに伝えていくことなど、お願いでした。
記事分類 NPO人権みんなの会記録 | コメント 0 »