表現の自由と映画・橋のない川
6日、土曜日。朝、民主会館へ車で出向きます。シャッターを開けるなど開館の準備を済ませて、新事務所に。
雑務。そして再び、今度は歩いて民主会館へ。この日は、第10回「若者と学ぶ部落問題解決の道筋」学習会の開催です。橋のない川・第2部の上映の上映です。1970年の今井正監督作品、140分の大作です。
かつて、この映画の上映運動を妨害する事件もありました。「上映阻止実行委員会」なる団体もあったのです。岡山では1970年代後半に上映運動があり、やはり妨害行動もありました。当時、妨害運動の先頭に立っていて後に岡山市議会議員になった人がいましたが、彼が上映会場の倉敷市民会館へ押しかけてきたとき、防衛にあたっていた私たちに、いろいろなやり取りのあと「先生という言葉は差別語だ」と言い放ったこと、忘れられません。議員はよく先生と言われますが、彼を・・・先生といった人に、それは差別語だと指摘でもしたでしょうか。そんな類の話は、噂でも一言も伝わってきませんでした。
今回の上映、約40名の方が参加されていました。朝早くタクシーで来場された女性、先回に久しぶりに第1部を見て今回もぜひ見たかったのできました、ビラに地図が載っていないので自ら運転してくる自信がなかったの、と話されていました。民主会館に初めてきてくれる人も対象に、という視点が抜け落ちていることに気づかされたのでした。
映画のエンディング、大きな拍手が沸き起こります。しかし、映画の感想を出し合う、話し合う時間がありませんでした。次回、10月4日の土曜日、午前9時30分からの第11回学習会では、この映画の感想を出し合うことと、人権連誕生の意義と民主主義の前進、を題材にして話し合いたい、と提案でした。
以下、1988年の全解連・東京都連の、上映妨害に対する見解です。
憲法無視、表現の自由を蹂躙
映画「橋のない川」上映妨害事件
1988年10月22日・23の両日、品川区の社会教育関係登録団体、「五反田よい映画を観る会」が、映画「橋のない川」第2部(今井正監督)の上映会を企画しました。 これは同会が、同年6月に映画「橋のない川」第1部(今井正監督)を上映し、好評だったことから、要望に応えて上映しようとしたもの。
ところが9月14日、「解同」品川支部を中心とする「差別映画『橋のない川』第2部上映阻止実行委員会」を名乗る団体が、品川区議会に、映画「橋のない川」第2部上映に際して「区の施設を一切貸さない事」を求める請願を提出。この請願は日本共産党区議団の反対を押し切り、自民・社会(当時)・公明・民社(当時)各党の賛成で採択されてしまいました。さらに「解同」に迎合する品川区は、上映会場の貸し出し許可の取り消しを「観る会」に通告。「観る会」は区教育委員会を相手取って東京地裁に執行停止の仮処分を求めて申し立てをおこないましたが、東京地裁は不当にもこれを棄却。即時抗告した東京高裁もこれを棄却し、上映会は開催できなくなりました。
憲法第21条は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と謳っていますが、「解同」とその同調者、「解同」に迎合した品川区は、これを真っ向から踏みにじったのです。会場使用の取り消しを認めた地裁・高裁の判決でも、「本件取り消し処分により、申立人は表現の自由という重要な基本的人権の行使を阻害されていることは明らかであり、その原因が阻止実行委等の実力行使にあることも明白である」(地裁判決)と明確に述べていますが、これは「解同」などが基本的人権を阻害する暴力集団であることを、裁判所が公的に認定したものです。
しかし判決は、この映画の上映をめぐっては「過去に流血事件等が起こって」おり、「このまま本件上映会を開催すれば、一般の文化センター利用者を巻き込んで流血事件等の不測の事態が生じる恐れが大きい」として、会場使用許可の取り消しを認めたのです。事実、10月14日に「上映阻止実行委員会」と「解同」品川支部が、予定会場となった五反田文化センターの館長宛に出した「要請書」では、彼ら自身が「万一、このまま会場使用が許され、上映が強行されるのであれば・・・・・・不本意ながら、実力をもってでも阻止行動を起こさざるを得ません。しかしそのような事は、他のセンター利用者や周辺住民に多大な迷惑をかける事になります」と、脅迫的に言っているのです。
このように「流血事件」すら辞さずに表現の自由を踏みにじる「解同」に、社会党(当時)は積極的に協力したばかりか、「上映阻止実行委員会」にその名を連ね、「上映会実力阻止」を叫び、区議会でも映画「橋のない川」と「観る会」を誹謗中傷したのです。東京都も、聴覚障害者のための映画「橋のない川」(今井正監督)字幕入りフィルムの貸し出しを「解同」の圧力で中止しており、「人権啓発センター」も、今井監督の「橋のない川」のビデオは貸し出しせず、表現の自由を踏みにじり続けています。
今井正監督の映画「橋のない川」上映阻止闘争については、実際に上映阻止に関わった灘本昌久氏が、「解同」がつくった東陽一監督版と今井正監督版を見比べて、評論を書いています。灘本氏の論評をすべて肯定するわけではありませんが、今井版の映画「橋のない川」が「差別映画」と呼べるものかどうかが現されていますので、興味のある方はこちらをご覧ください。また原作者の住井すゑさんも生前、今井版「橋のない川」には批判的な見解を持っていましたが、「あの映画は観たほうがいい。 映画を観ないで『差別映画だ』『差別映画だ』と騒ぎ立てるやつらのほうが、人間として下の下だ」と批判していました。
記事分類 NPO人権みんなの会記録 | コメント 1 »
--> 14年09月7日 at 18:53:19
ご無沙汰しています。日々の活動、本当にご苦労様です。昔々「橋のない川」上映について職場でも議論しましたが、反対する人たちはとにかく阻止しなければという使命感で目がつりあがっていたような記憶があります。たしか、昔を回想する場面で「あれはいい思い出です」というせりふがけしからんと言ってたような・・。